ちりめんじゃこの命

仮想のアドレナリン

小学校のクラス内流行 事例集

この記事の推定カロリー:7分

 

 

エピソードトークって面白いのでなんぼあってもいいですからね。今回は当ブログ編集メンバーに、「小学校のクラス内での流行について教えて」というテーマでエピソードを綴って貰いました。

 

 

 

 

流行:ドナルドじゃんけん

 おそらく2009年頃、ネットが好きなクラスメイトが多かったので、ドナルドじゃんけんが流行っていた。「あれやろうぜ!」のドナルド版である。

 え、「あれやろうぜ!」で伝わらない?

 「あれやろうぜ!」の正式名称について調べたら、シーシーレモン、あるいは戦争、寿司じゃんけん、ドンパッチなどのローカル名称があるらしい。詳しくは👇の記事を参照。

 

シーシーレモン(遊び) - アニヲタWiki(仮) - atwiki(アットウィキ)

記事の要点

・エネルギーを溜めて、エネルギーを消費してアクションを起こす、戦略性のあるじゃんけんである

・ローカルルール化が激しい

・このゲームには名前がついていない場合が多い

 

 その「ドナルドじゃんけん」というローカルルールは、以下のようなアクションがあった気がする。前提として、互いに同じ技ならあいこである。

 

消費x0 溜め:エネルギーを溜める技。

消費x0 ガード:ただのスキップ技。攻撃を躱して相手のエネルギーを削る目的で使われる

消費x1 ほらね:相手が溜めなら勝つ

消費x2 ポテトスラッシュ:相手が溜め/ガードなら勝つ

消費x2 もしもし:カウンター技。相手が攻撃技なら勝つ

消費x3 ドナルドステップ:相手が溜め/ほらね/ポテトスラッシュなら勝つ

消費x4 ドナルド羞恥心:もしもしを除く全てに勝つ

消費x5 ランランルー:ドナルド羞恥心を除く、全てに対して勝つ。もしもし無効。

 

 かなりおぼろげな記憶なので無意識に捏造した点もあると思うけど、概ねこんな感じだった。インターネット広しといえども、ドナルドじゃんけんについて言及したページは、調べた限りだと当ページだけだった。プレイヤーは観測範囲内だと40~80人ほどだった。

 

 最初はもっとシンプルだったが、シンプルなゲームに飽きたジャンキーがルールを複雑化していった。「あいつとプレイするときはシンプルなルールで、でもあいつとプレイするときは複雑なルールでやろう」という暗黙的了解のネットワークがあった。ローカルの中でもさらにローカルルールがあるということだ。

 もちろん、アクションを行う際はポーズをとる。

 満を持してのランランルーはゲームを強制終了させるデウスエクスマキナであった。ましてや、ドナルド羞恥心でランランルーに勝つ展開は一度しか見たことがない。華麗にドナルド羞恥心のポーズを決めたタツヤくんの雄姿を、私は忘れない。

 皆、ドナルドのモノマネをしたくてしょうがなくて、合法でドナルドのモノマネをしていい文脈を作るためにドナルドじゃんけんをやっていた節がある。その考えを応用して、ホモビデオじゃんけんというのを設計したら全国の小中学校で流行りそうな気がしているけど、あまりにも品性下劣なので設計してはいけない。

 

 

 

 

流行:独自通貨

 小学校5,6年生あたりの時期に自分のクラス内だけで流通した通貨があった。

 絵が上手いやつがオリキャラを使って紙幣の真似をしたのがきっかけで、それを量産するうちにだんだん通貨になっていった……みたいな感じだった気がする。単位は忘れたが。

 先生もそれを容認していて、その通貨を用いて各々が書いた漫画を売り買いしたり、帰りの会で時間が余ったら強いバトエンをめぐってオークションが行われたりもした。

 しかし、金の出る条件が曖昧だった(バイトと称して手伝いをすれば小切手のように通貨がもらえたり、カッケー紙幣がいきなり5億兆円になるみたいなことがままあった)ので、最終的にとんでもないインフレを起こして廃れていった。

 今思えばこんなこと容認してた担任はヤバすぎる気もするけど、一番ちょうどいい流通量だったときのクラスがかなり””社会””になってたなーと思うと、先生が容認してたことにも納得できる気がする。通貨を通してクラス内に適度な距離感が生まれていたのかもしれないですね。

 

 

 

 

流行:阿修羅閃空

小学校5~6年生の時。
当時、男子の間で『ストリートファイターZERO3』という格ゲーが流行しており、学校の休み時間に豪鬼という隠しキャラの技『阿修羅閃空』の動きを真似る、という遊びに興じていた。

◆遊び方◆
・廊下を適当な距離走る。
・ある程度速度が出たら、片足を上げ腕を組み*1、滑走する。
・滑った距離や動きの再現度などを評価する。

要するに「片足立ち状態でどれだけ格好良く廊下を滑れるか」という遊びである。

男子は昼休みになると必ず教室ふたつ分の廊下を占有し「おれ今日は残像*2出せるわ」「そのまま瞬獄殺*3いけるわ」等と豪語しながら日々『阿修羅閃空』の再現に精進していた。
特に廊下にワックスが掛けられた翌日は滑りが良くなるため、大変盛り上がった。
また、靴の下に紙を貼る、あえて靴底がすり減った古い靴を持ってくる、などの創意工夫もなされていた。

ある日、いつものように『阿修羅閃空』の再現度を競い合っていると、仲間のひとりであるたつみ君(仮名)が盛大に転んでしまった。
彼はいつも他の子と比べよく転んでしまうため、その時も「おいおい大丈夫か~(笑)」という感じで周囲が接していた。
しかしその日は違っていた。いつもはすぐに起き上がり笑ったり悔しがるたつみ君(仮名)が、動かないのである。
心配になり様子を見ると、彼の顔の周辺に、徐々に血だまりが出来始めていた。
近くで見ていた女子が叫ぶ。騒然とする廊下。焦る男子たち。なおも動かないたつみ君(仮名)。
騒ぎに気付いた先生が駆け付け介抱すると、たつみ君(仮名)は血で真っ赤に染まった顔に不釣り合いなほど最高の笑顔を浮かべながら「いやーダメだった!」とケタケタ笑うのであった。
どうやら受け身を取り損ね顔面から思い切り転んでしまい、大量の鼻血を噴いているようだった。

それ以来『阿修羅閃空』の動きを真似る遊びは禁止となった。
大人になった今にして思うと普通に危ない遊びだな、と思うのだが、小学生男子はスリリングを求めがちなので仕方が無い気もする。
良い子の皆は絶対に真似しないでください。

 

 

 

 

 

流行:秘密基地

 放課後、秘密基地遊びが流行った時期があった。校区内にコンビニ・スーパーはおろか信号すらない地域で育った我々は、ゲーム機で遊ぶ時もあったが、基本的には外で遊んでいた。だからこの秘密基地というものは、誰かの家の中ではなく、身近な自然の中に存在した。

 秘密基地のひとつをご紹介しよう。公園の端にある基地だ。人一人がようやく入れる入り口から鬱蒼とした茂みをかきわけると、小さな森のような空間が広がる。木々の間から光が差し込んでいて、それが風で揺らめくのが幻想的だった。

 ここでは、大人たちが来ることのない、僕・私たちだけの空間を楽しんだ。別に何をしたというわけではない。ひたすら歩くだけ。しかし、大冒険をしているような気分になれる。幼かった私たちは、それだけで十分だった。

 ある時、先述した公園のすぐ隣にある草原で、刈られた藁のようなものが放置されていた。私たちはそれで四角いスペースを何個も作り、個室の秘密基地を完成させた。

 そこに上級生のお兄ちゃんが一人、のこのことやってきた。一言、

 

「こんな丸見えやったら秘密基地とちゃうやん」

 

 と言って、颯爽と去っていった。

 素直に、たしかに! と思った自分がいた。……この時からかもしれない、自分と他者の視界の違いを意識したのは。当時は間違いなく、想像の中では「誰にも見えない部屋」があった。自分だけの空間だった。でも、人から見たらそこは藁が敷かれた場所で、秘密でも、基地でも、なんでもなかったのだ。

 振り返れば、最初に紹介した茂みの奥の空間だって、知らない大人の土地であることは確か。別に「僕たちだけの場所」ではない。

 記憶が正しければ、あの日を境に秘密基地遊びは自然消滅していった気がする。

 秘密基地というものは、我々が幼かったからこそワクワクすることができた、有限の楽しみであったと思う。

 

 

 

(絵:いーぬぬま)

 

 


 

この記事はちりいのアドベントカレンダーの11日目の記事です。

*1:本来の『阿修羅閃空』は腕組みではなく殴り掛かる直前のようなポーズをとっている。

*2:本来の『阿修羅閃空』では残像が現れるため。

*3:豪鬼の超必殺技。瞬獄殺の最初のモーションが『阿修羅閃空』であるため。